上原氏が話出した。「桜丸先生とは25年ほど前からの付き合いです。
といってもここ10年近くは、あまり会ってないんですがね。
考えてみればお互いまだ若く元気で、そして一番いい時代だったな。
先生が50代ちょっとで私は30になったばかり」
「上原さんて今いくつなんですか?」「52です」私より二つ下か。
高そうなスーツに高価な時計。そして高級赤ワイン。また新たに注文する。
さすが大手出版会社の重役。白髪まじりの髪形にハナ髭がよく似合っている。
もしかしたら私より年上かもと思ったが、やはり年下であった。
「先生の小説をうちの雑誌に連載されていて、
評判もよく何冊か文庫本になってます。画にもなってます。
女子大生ナツコのアバンチュールは結構な興収だったと聞いてます。知ってます?」
「ああその題名は覚えてるなあ。かなりエッチな内容ですよね」
「そうです。桜丸先生の作品は男性にも女性にも人気がありましたね。
本当に助平な内容なんですが」「それなりに売れっ子だったんだ」
「売れっ子ですよ。忙しかったなあ、あの頃は」「そうだったんだ」
私はもう一度振り返りゆうさんを見る。
さつきちゃんのことはもう忘れてるのか、
渚ちゃんの手をとって無意味な手相診断をしている。
やっぱり助平なジジイだ。「だけど、結構仲は良かったんでしょ?」
「一般的な作家と雑誌社の関係ですが何度か飲みに連れて行ってもらいましたが。
何というかちょっとした手違いというか誤解というか…残念です」
「なにがあったんです?」