これは、あくまで私の推測だが、咲さんが結核で余命いくばくもない状況の時、子供がいる事をゆうさんに告白したのではないか。当時ゆうさんはたしかまだ14、5歳。誰の子かわからないが、その子だってまだ幼かったはず。初恋の人咲さんはその事を告げて逝ってしまった。
その後新聞記者、作家となっていきながら咲さんの子供を捜していたのではないか。ようやく当てがあって捜し出したのが山下という男。多分咲さんの面影があったのだろう。ゆうさんは面倒見る事にした。
上原氏にとってゆうさんと山下の関係はわからない。ただ山下の死によって売れっ子作家が断筆までするんだから半端な思い入れではない。その前にスポーツ新聞記者からなぜ官能小説家になったのか、そっちの方も興味をひく。
ま、余計な詮索だな。「ともかくその事があってから桜丸先生とは縁遠くなりました。
だからこの店で見掛けてびっくりしまった」「六本木では有名人ですよ(笑)」「そうですか。だけど先生老けましたね」「今夜は特にね」私はまた笑った。その時、高橋君がそばに来て「さつきちゃん今来ました」と告げる。
金持ちそうな若い男と腕組んで派手目の服を着た女がさつきであった。少し酔ってるようだ。
写真の咲さんに似てないことはないが、やはり顔も少々派手目。私が見続けるので「渕選手のタイプですか」と上原氏が聞く。
「いや俺じゃなく大先生のね」「へぇ、桜丸先生の!」と驚く。ゆうさんはわかったのか、彼女の顔を見ている。「少したちましたら側に座らせますから」と高橋君が言う。
さて私もそろそろゆうさんの席に戻るとするか。上原氏には赤ワインをご馳走になるわ面白い話も聞かせてもらった。